(第53号・2017(平成29)年10月20日号)
  季節の便りをお届けします。

< 地 図 − 生き物リスト >

 あさっては衆議院選挙である。昨夜熱田区役所で期日前に投票した。はてさて誰に、どこに投票したら良いものやら。
 自民党の安倍首相は一度辞めた人、国民を守ると声高に言われてもイマイチ信じられない。戦争に負け、金輪際戦争しないと誓わされてできた憲法を70年も守ってきたのだから、やはり変えるべきでない。3.11で今でも福島の人がひどい目に遭っている原発は、すぐにできないかもしれないが、廃止すべきである。右翼でも左翼でもない中間をリベラルだと思っていたが、知らぬ間に左翼が右寄りになったせいかいっしょくたにしてリベラルというらしい。
消去法でいくと自分の考えは立憲民主党に近いかな?
 前回更新から1年近く経って、今回は、国有林のOB会報の原稿を頼まれ急いで書いた「わが家の薮」と、長いことかかって読んだ「土と内臓」の話。

「わが家の薮」
 昨年9月から名古屋で単身赴任、日本森林林業振興会名古屋支部で、土木資材販売や山林調査などの仕事につき、はや1年になる。国有林で34年、転勤や単身生活が長かったので、退職後はゆっくりとも思ったが、少しでもお役に立てればと、今の仕事についた。あんまり先のことは心配せず、毎日を大切に、健康と交通事故に気をつけて、もちょっとがんばりたいと思っている。
 さて、わたしは子供のころからドングリ、木の実などを見つけるとポケットに入れて拾ってくるクセがある。採取生活をしていたご先祖様の遺伝子・DNAのなせる業か、ほとんどは放ったらかしでカピカピに乾いてしまったり虫に食われてゴミ箱行きとなるが、中にはビニールポットで芽を出し大きくなったものもある。
 高山市内に自宅を建てて今年で10年、40m2ほどの空間に、転勤生活では叶わなかった、そんな庭木が少しずつ増えてきた。
 タネ・実生・挿し木から大きくなった、アカナラ、コナラ、ドウダンツツジ、トチノキ、ノリウツギ、ハクウンボク、ホオノキ、ミツバウツギのほか、植樹行事などで記念にもらったコデマリ、ナツツバキ、ムラサキシキブ、モミジの園芸品種。タネが飛んできたのか、土や腐葉土といっしょに運ばれてきたのか、自然に生えてきたアカマツ、ウツギ、キリ、シラカバ、タラノキ、ネムノキ、ミズキ、ミツバアケビ。草ではススキ、ドクダミ、ミョウガなどなど、まさに所狭しと生えている。
 それぞれの産地とわが家に来た経緯を話すと長くなるが、いくつか簡単に紹介する。
 ノリウツギはもう20年も前、古丹別署(旭川)のときに吉野和紙の紙漉きの原料として甘皮を販売していたのもので、挿し木からようやく高さ2mほどになり白い花を咲かせてくれる。
 ミツバウツギは吾妻署(群馬)のときの榛名山麓で拾ったタネから、良い香りがする白い花が咲くほどになった。署の玄関脇にあったドウダンツツジからの挿し木も大きくなった。
 アカナラとハクウンボクは、三八上北署(青森)を行き来したときに東北道の畑PAと前沢SAで拾ったタネから大きくなった。話は逸れるが、夏休みのサービスエリアはとても暑いのでもっと木陰があったらよいと思う。奥入瀬渓流の道端で拾ったトチの実は、すぐに芽が出ましたがなかなか大きくならない。
 地元飛騨署の植木のサザンカは、忘れかけた頃に芽が出てきて2年生。
 自然に生えてきたもののうち、キリの生命力は別格である。最初軒下のコンクリの脇に白っぽい葉が出てきて何だろうと思っていたら、2年目には1階の屋根の高さになった。隣のお宅に迷惑なので伐ってちょうだいとカミさんに言われ、「夏場は日よけになるので、葉が落ちたら伐るよ」と、翌春に伐ってもちゃんと萌芽し夏にはまた1階の屋根の高さになる。まさに伐っても伐ってもキリがないというわけである。
 このほか、ホオノキは10年で高さ約5mほどになり、昨年から葉っぱで「朴葉寿司」を作ってもらっている。またタラノキは今年初めて天ぷら1回分が採れた。
 単身生活で休日しか自宅にいないもので、だんだん薮状態になってきた。
 さて、これらの庭木をどうしたものか。あまり大きくなると移植するのが大変なので、この秋、クリやクルミの苗木も少し購入し、「三つ子の魂百まで」という、子や孫にも手伝ってもらって、実家の山に植えたいと考えている。

「土と内臓」

 植物は根から水や養分を吸って成長しているが、根のまわりには植物が必要な微量元素を吸収しやすくしてくれる様々な微生物・細菌がいて、植物のほうも根から微生物が必要な養分を出しているという、植物と微生物とが共生関係にあることが分かっている。
 一方で、農作物を早く、多く生産したり、病気にかからないよう、様々な化成肥料や農薬を使う農業が発展してきた反面、元からある土壌の肥沃度が低下し、植物と微生物の共生関係も薄くになって、化成肥料や農薬なしでは農業が続けられないという事態にもなっている。
 これではいけないと、植物と微生物の共生関係を見直し、微生物の生育環境を整えるため土壌に自然の堆肥を入れるといった有機農法が見直されている。

 同じようなことが人間でも起こっている。
 人間の内臓、腸には1000種類以上、何兆個もの微生物・細菌が住んでおり、食べたものを分解するだけでなく、抗体とか炎症を防いで人の体調を整える物質を作ってくれるといった、人間と微生物も共生関係にあることが分かってきている。
 一方で、様々な病気をなくすため抗生物質が開発・使用されてきたが、抗生物質の多用による耐性菌が出現したり、アレルギーや慢性疾患の原因は人間と微生物の共生関係が壊れたため、ともいわれている。
 自分自身、ウンコの成分は食べ物のカスだと思っていたが、実際は食べ物のカスは5%しかなく、70%が水分のほか、使われなくなった腸の細胞が15%、微生物の死骸が10%もあり、いかに多くの微生物が腸内にいるかということが分かる。
 植物を育てるのに堆肥や有機肥料が大切であるように、腸内の細菌を活性化するには繊維質が必要なのだという。糖分はすぐに体内に吸収されるので微生物のエサにはならず、肉類を多くとると消化するときに発生する硫化水素などが炎症、ひいてはガンの原因となったりするという。
 私たちの体は、何十億年もかけて進化とか共生によってできてきたもので、人類となってからも、ご先祖様たちが200万年もの間、自然の中で食べ物を探し、葉っぱや根を洗ったり煮たりして食べて生きてきた体の仕組みを私たちは引き継いでいる。
 現在はおいしい食べ物に囲まれ、何でも好きなものを食べることができるが、野菜、特に繊維質の食べ物をとったり、過度な殺菌剤や抗菌剤を避けるなど、体の中の微生物たちとの共生のことを少し考えてやりたい。
 腸管出血性大腸菌O−157に代表されるように、微生物とか、細菌というと、病気の元だと思っていたが、病気の元となる細菌は一部なのだそうで、「目からウロコ」の話であった。


(H29.10.20更新)